皆さんこんばんわ。方向音痴でお馴染みの私こと負け犬です。
このお話は前回の続きだと思われます。
なので前回のお話を読んでおいたほうがいいような気がします。
なお、これは小説などをまともに書いたことが無い超絶ドドドドド素人が書いたお話ですので、とてもお見苦しいお恥ずかしい点が盛り沢山だと予想されます。
それでも『俺はどうせ暇人だ、いいぜ!見てやんよ!』という慈愛に満ち溢れた方はゆっくりしていってね☆
落ちこぼれ神社
23:18
ー炊事場ー
『青天の霹靂』 という言葉は誰もが知っていることであろう。
ざっくり説明すると『人を驚かせる突然の出来事』という意味である。
青天=青空、霹靂=雷 という意味があり、この2つを繋げると『青空に突然雷鳴が轟く』という意味になる。
なるほど、確かに青空なのに突然雷鳴が轟けば誰もが驚くであろう。
青天の霹靂はまさに文字通りの意味を持っている言葉なのがわかる。
そして、今の状況は姉にとってまさに青天の霹靂だった。
姉がいるこの場所、炊事場に誰かが来るのは別におかしくはない。
だが、来た人物が見知らぬ少女となればもちろん話は別だ。
「ねぇ、あなたが主?」
驚く姉を特に気にした様子もなく、少女は話しかけてくる。
少女の顔色からはなにも読み取ることができない。
少女は顔に白い狐の面を被っているが、面の左耳と左目の部分が大きく損傷しているため、少女の左目だけは姉も確認することができた。
『目は口程に物を言う』とはよく言ったものだが、少なくともその少女の左目は何も語ってはいなかった。
他に少女の特徴を挙げるなら、腰まである長い緑黄の髪。
胸元に赤い紐リボンがついた白いノースリーブシャツに、フリルがついた黒いスカート、さらにシャツの上から紫色の着物のような服を着ていた。
和と洋を合わせたような恰好である。
「・・・ぃ」
驚きのあまり声が出ないのか、姉は小さな声で何かを呟いている。
まぁ、そりゃそうよね。
突然割れた狐の面を被った見知らぬ少女が現れれば誰だって驚くよね。
無理もないy
「可愛い!!」
・・・はい?
「あなたg」
「きゃー♪あなた可愛いねぇ♪この和と洋が合わさったような服はどこで買ったの?もしかして自作?」
「ちょっと・・」
「その被ってるお面は正直ちょっと不気味だけど、そういうのもお姉ちゃんは嫌いじゃないよ♪」
「あのぅ・・・」
ええぇ・・・。
姉が可愛いものが好きなのは知ってはいたが、ここでその反応はちょっと予想外である。
驚きよりも可愛いものを愛でたい気持ちが勝ったようだ。
見知らぬ他人、それも不気味な面をつけている者が急に現れれば大多数の人は驚くと思うのだが・・・。
姉はどうやら少数派のほうらしい。
「ねぇ?私の話聞いてる?」
「はぁ~可愛い、よ~しお姉ちゃんがナデナデしてあげる♪」
姉が目を輝かせてグイグイ来るため、少女も鳩が機関銃を食らったかのような顔で目をパチクリさせている。
不気味な面すらもまとめて可愛いと表現する辺り、どうやら姉の『可愛い』の範囲は大海原のように広いようだ。
「うぅ・・・この人は主じゃなさそう」
少女はそう言うと、姉のナデナデ攻撃からするりと抜け出した。
そして姉にナデナデされて若干ボサボサになった頭を両手で押さえながら炊事場を出ていった。
「あっ、どこに行くの~?」
姉は少女の背中に問いかけたが、返事が返ってくることはなかった。
少女がいなくなって再び訪れた静寂を引き立てるかのように、半開きのドアがキィキィ揺れていた。
「もうちょっとナデナデしていたかったなぁ・・・」
「ってそうじゃなくて!あの子は一体誰なんだろう?」
姉の意識が可愛いものを愛でたいデレデレモードからみんなの頼れる優しい幼馴染にようやく切り替わったようだ。
本来真っ先に抱くべきであろう疑問に今さらながら行き着いていた。
姉も意外と天然なのかもしれない。
「『主』を探しているみたいだったけど、主って誰だろう?」
「この神社にいる誰かのこと?」
少なくとも私ではない。
心当たりが全くない姉は、まず自分を主候補から外した。
では残りの5人のうちの誰か?
しかし、狐の面をつけた従者がいるなんて話は5人の誰からも聞いたことがない。
「・・考えてもわからないものはわからないよね」
「危害を加えそうな感じの子じゃなかったし、追いかけなくても大丈夫だよね」
「・・・たぶん」
ひとまずそう言って自分を納得させる姉。
「とりあえず、お夜食を持ってみんなのところに戻ろう」
「その後にみんなに訊いてみようかな」
そう結論付けた姉は途中になっていた片づけを再開した。
色々と気にはなるが、一人で考えていても仕方がない。
あの謎の少女を愛でていたおかげで少しだけ余分に時間がかかってしまったことだし、早くみんなのところに戻らなくては。
そう考え、逸る気持ちを抑えながら姉はテキパキと片づけをするのだった。
23:20
ー広間ー
「そういえば、お皿とお箸が必要だなぁ」
幻想をブチ殺され、床でのたうち回っていた負け犬が正気を取り戻して早々に言った言葉がそれであった。
「お皿とお箸ですか?・・・あぁ、そうですね、みんなでペヤングを食べるときに必要ですね」
「あんた、用意してなかったの?」
「イエス!オフコース!!」
「『オフコース!!』じゃないわよこのお馬鹿!」
どうやら負け犬はペヤングとヤカン(お湯)を用意しただけで、食器は用意していなかったらしい。
さすが気が利かないことで有名な負け犬、その名は伊達ではなかった。
箸すら用意しないという駄目っぷり、そこに痺れないし憧れない。
「それをもっと早く言えば姉についでに持ってきてもらったのに」
「許してちょんまげ♪テヘペロ☆」
「・・・・・」
「ゴキブリの交尾を見るかのような目で俺を見るのはやめてくれる?さすがに傷つくんだけど」
自業自得である。
「仕方ないわね・・・勝ち猫?悪いけど炊事場に行って食器を取ってきてくれるかしら?」
「お断りします、常にお兄様のお傍にいることは全世界の妹の義務です」
そんな義務はないし、ていうかそれもう義務じゃなくて勝ち猫の欲望じゃん。
「ふふっ、何か言いましたか?ナレーターさん?」
ははっ、いややなぁ~ワイは何も言っとらんで?
せやからそのおっかない包丁しまってくれへん?
「ナレーターさんいなくなると今後の進行に支障が出るからそれくらいで許してやってくれる?」
「お兄さまがそうおっしゃるなら仕方ありません」
「お優しいお兄様の寛大なお心遣いに感謝することですね」
おぉ怖い怖い。
「それと勝ち猫?食器とってきてもらっていいかな?」
「お兄様のお願いとあらばこの勝ち猫、全身全霊全力全壊で食器をとって参ります」
「私がお願いしたときは即答で断ってたわよね?まぁいいけど」
先程とは180度違う返答をする勝ち猫を微妙に複雑な表情で見る巫女。
ここまであからさまに違う態度を取られるといっそ清々しく感じてしまう不思議。
どうでもいいが、食器を運ぶのに全身全霊全力全壊とは一体どういうことなのだろうか?
全力全壊で食器を取りに行ったら食器が全て砕け散りそうで怖い。
「それでは食器を取りに行ってきますね」
「うん、頼む」
「すぐ戻ってきますね」
「いや、急ぐと危ないからゆっくりd」
「すぐ戻ってきますね」
「はい」
勝ち猫は光の灯っていない濁った目でそう言うと、食器を取りに部屋を出ていった。
「・・・最近、勝ち猫がますます病んできてるように見えるのは私の気のせいかしら?」
「奇遇だな・・・俺もそう思っていたところさ」(白目)
引きつった顔で負け犬はうなだれた。
ヤンデレは漫画やアニメで観る分にはかなりの萌え属性だが、実際に体験するとなると話は別だ。
ヤンデレ駄目、絶対。
「さて、それじゃ私、1度境内の社務所に行ってくるわね」
「何か用事?」
「大した用じゃないわよ、ちょっと忘れ物を取りに行くだけ」
「それならついでに食器を取りに行けば良かったんじゃ・・・勝ち猫に頼む必要なかったんじゃね?」
「社務所と炊事場って全然方向が違うから私が行ったら時間かかっちゃうわよ」
巫女はそう言って部屋を出た。
「なんだかんだで俺一人になったな・・・」
「あ、そろそろトイレに行ったお嬢と白衣が戻ってくる頃かな?」
そう呟いた負け犬は誰か戻ってくるまでの暇つぶしにチェスのコマで遊び始めた。
「やめてっ!!私に乱暴するつもりでしょ!?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!」
負け犬はチェスのコマで円陣を組ませ、その中央にクイーンを置いてエロ同人ごっこを始めた。
もっとマシな暇つぶしはいくらでもあるというのに・・・・つくづく救えない大馬鹿者である。
同時刻
ー厠ー
お嬢はトイレ前の廊下の窓から月を見ていた。
雲一つない空に浮かぶ月が、夜の闇をぼんやりと照らしていた。
「今夜は月が綺麗ですわね」
状況によっては告白にもなり得るその言葉をお嬢はボソリと呟く。
ちなみに、お嬢は『月が綺麗ですね』という言葉の意味を知らない。
花より団子で色気より食い気な彼女は、愛を語るにはまだ早いようだ。
「お腹すきましたわねぇ・・・もう姉さんが広間に戻っているころですわね」
「お夜食が楽しみですの」
トイレを済ませたお嬢はトイレに入っている白衣を廊下で待っていた。
そろそろ白衣さんも出てくる頃合いですわね、お夜食楽しみですわ
余程お腹が空いているのであろう。
お嬢の頭は夜食のことでいっぱいだった。
その証拠に、お嬢の口からは涎が垂れそうになっていた。
「っ!おっと、危ないですわ、レディたるもの涎を垂らしてはいけませんわね」
淑女には程遠いなんちゃってお嬢様は、自分の涎が床に垂れていないか確認しようと下を見た。
「う~ん、薄暗くてよく見えないですわね・・・」
お嬢が今いるトイレ前の廊下の灯りは数日前から点かなくなっていた。
恐らく電球が切れているのであろう。
そのため、トイレ前の廊下は若干薄暗くなっていた。
床に這いつくばって確認してみたところ涎らしき液体は見当たらなかったので、一安心したお嬢は立ち上がった。
そしてなんとなく廊下を見渡してみた。
すると
「・・・え」
トイレを出てそのまま廊下を直進したところの曲がり角。
その曲がり角のところに誰かがいた。
廊下が薄暗いためよく見えないが、顔に狐のような面を被り、紫色の着物のようなものを着ているように見える。
(え?何?なんですの!?とても怖いですわ!!)
(も、もしかして幽霊ですの!?どどどどどうしましょう!!??)
幸いにも、お嬢は先ほどトイレを済ませていたので漏らすことはなかった。
予期せぬ突然の事態にお嬢が半ばパニックに陥っていると、お嬢の背後にあるトイレのドアが開いた。
「待たせたなぁ・・・ですぅ。」
「・・・ん?・・どうかしたか?・・・ですぅ。」
どこかの伝説の傭兵を思わせる口調でトイレから出てきた白衣だが、すぐに異変に気付いたようだ。
「ででででで出たんですのよ!!」
「・・・小便なら・・さっき・・・出しただろ?・・・ですぅ。」
「違いますわ!!幽霊が出たんですの!!」
「はぁ?・・・なに・・トチ狂ってんだ・・・ですぅ。」
「ほ、ほら!あそこですわ!!」
「・・・確かに・・誰か・・いる・・・ですぅ。」
パニくってるお嬢が指さした先を見て事態を把握した白衣。
あれが幽霊かどうかはさておき、ひとまずお嬢を落ち着かせなくては。
そう考えた白衣だったが、狐面の少女はその考えを嘲笑うかのようにゆっくりとこちらに近づいてきた。
そして
「HEY!YOU!YOUはアタイの主様?イイイイイイイイヤッッッハァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
突然大声を張り上げてきた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!なんですのなんですのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「あらゆる意味で怖いですわぁぁぁぁぁぁ!!!」
お陰でお嬢は大パニックである。
うん、狐の面を被った少女がエセ外国人みたいな口調で叫びながら近づいてくればそりゃ怖いわ。
ギャップとかそんな生易しいレベルじゃねぇってくらい怖い。
「チッ・・・・」
白衣は舌打ちをしながら素早く懐に手を入れ、黒いコンバットナイフを取り出し戦闘態勢にはいった。
白衣愛用のナイフが薄暗い廊下で鈍く光る。
ナイフを構えた白衣を気にもせず、狐面の少女はゆっくりと確実に近づいてくる。
あと4歩。
あと4歩近づいてきたらこちらから仕掛ける。
そう決めた白衣は相手の一挙手一投足に集中し、攻撃のタイミングを計りはじめた。
それを知ってか知らずか、狐面の少女は尚もゆっくり近づいてくる。
1歩
2歩
3歩
よn
「逃げますわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「え・・・ちょっ・・・・」
恐怖が臨界点に達したお嬢は白衣の手をとると脱兎の勢いで逃げだした。
狐面の少女の横を彗星のごとく走り抜け、そのまま少女から少し離れたところにある部屋に逃げ込んだ。
そして白衣はドアに鍵をかけた。
「ぜぇー・・・ぜぇー・・・い、一体あの幽霊はなんですの・・?」
「・・あれは・・・幽霊では・・ない・・・と思う・・ですぅ。」
「なんでわかるんですの?」
「・・足が・・・あったから・・・ですぅ。」
「幽霊にだって足はありますわよ」
「負け犬さんが昔プレイしてたエロゲに出てきた幽霊キャラだってちゃんと足がありましたもの!」
「・・あいつは・・・あとで・・しばき倒す・・・ですぅ。」
負け犬の知らないところで負け犬がしばき倒されることが決定してしまった。
哀れな奴である。
隠れて少し安心したためか、微妙に緊張感のない話をしている二人であった。
「とりあえず隠れてみましたが、ここからどうするんですの?」
「まずは・・他の・・・面子と・・合流・・したほうが・・いい・・・ですぅ。」
「・・・ん?・・・何か・・聞こえる?・・・ですぅ?」
「え?そうですの?」
「・・静かに・・・しろ・・ですぅ。」
白衣の言う通り、確かに何か聞こえる。
どうやら誰かが歌っているようだが・・?
か ご め か ご め
「・・・かごめ?・・・ですぅ」
籠 の 中 の 鳥 は
「この歌、聞いたことありますわよ」
い つ い つ 出 や る
「これは・・・子供の・・遊び・・・民謡・・ですぅ。」
「なんでそんな歌がここで聞こえるんですの・・・?」
夜 明 け の 晩 に
「・・・声が近づいてきてるような気がしますわ・・・・気のせいですわよね?」
「・・残念ながら・・・気のせい・・じゃない・・・ですぅ」
鶴 と 亀 が 滑 っ た
「どどどどうするんですの!?ここにいてはマズいんじゃありません!?」
「・・ドアに・・鍵は・・・かけてあるから・・・入って・・来れない・・ですぅ」
後 ろ の 正 面 だ ぁ れ
「「・・・・・」」
お嬢と白衣は直感した。
後ろに・・・なにかいる。
最後の『後ろの正面だぁれ』という声もすぐ後ろから聞こえた。
それになにより、背後に圧倒的な存在感がある。
後ろを振り向くまでもなくわかる。
間違いなく、後ろになにか、いる。
「・・・・・」
「・・・・・」
お嬢と白衣は顔を動かさずに目だけ動かし、冷や汗をかいたお互いの顔を見合わせた。
そして二人同時に僅かに頷き
「にぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」
後ろを振り向くことなく一目散にドアを蹴破って逃げ出した。
「ドアを・・通らずに・・・いきなり・・・背後に・・・現れるとは・・・マジもんの・・幽霊か?・・・ですぅ」
「さすがの・・・私も・・冷や汗を・・かいたぞ・・・ですぅ」
「だから言ったじゃありませんの!!あれは幽霊ですわよ!!」
お嬢は走りながら叫んだ。
その顔は淑女にあるまじきギャン泣き顔である。
一方の白衣はというと、表情はいつもと変わらぬ無表情だが若干冷や汗をかいていた。
心なしか顔も引きつっているように見えなくもない。
二人は後ろを振り向くことなく一心不乱に放たれた弾丸の如く走る。
それほど全力で走りながらもこうして喋ることができるのは二人が想像以上の体力の持ち主だからなのか、それとも火事場の馬鹿力によるものなのか。
恐らくは後者であろう。
「白衣さんなんとかできませんの!?お強いでしょ!!?」
「・・いくら・・・私が・・強くても・・・こればかりは・・無理・・ですぅ。」
「ミュウツーでも・・・体当たりでは・・・ゴーストタイプの・・ポケモンを・・・倒すことが・・・できないのと・・同じこと・・ですぅ。」
「それにしても・・ヴェネチアの・・・時といい・・・今といい・・・この私が・・撤退を・・・余儀なくされる・・とは・・・屈辱・・ですぅ。」
「ヴェネチアで一体何がありましたの?!いやそれよりもなによりも!!」
「自分をミュウツーに例えるとか図々しいですわよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
この非常事態真っ只中な状況でも緊張感のない会話をする2人は、迷うことなく先ほどまでみんなで遊んでいた広間を目指して駆け走った。
みんなと合流すればきっとこの窮地を脱することができる、そう信じて。
あ、白衣がヴェネチアでどんな目にあったのか知りたい方はこちらを見てくださいね☆
23:31
ー境内ー
「・・・?、なんか母屋が騒がしい気がするわね」
境内にある社務所に忘れ物を取りに行くという目的を無事に果たした巫女は、月明かりに照らされた境内にてそう呟いた。
月は境内のみならず、社務所や落ちこぼれ神社の本殿も昏く照らしている。
ちなみに巫女の忘れ物はなにかというと、予定の書かれている手帳だった。
つまりはスケジュール帳である。
彼女は落ちこぼれ神社の予定をいつでも確認できるよう、スケジュール帳を肌身離さず持っているのである。
真面目な巫女らしい行いである。
まぁ、この寂れた神社に手帳に書くほど予定があるのかどうかは別問題だが。
「それにしても、今夜は月が明るいから懐中電灯が無くても外を歩きやすいわね」
「こんなに月が綺麗な夜は月を眺めつつお茶を飲みたくなるわ・・・」
月明かりの下、巫女は境内を歩きつつそう独りごちる。
そして巫女は境内の真ん中で立ち止まり
「ねぇ?あなたもそう思わない?」
後ろを振り向くことなく、背後に向かってそう問いかけた。
「あら?気づいてたんスか?」
巫女の背後にはいつの間にか、騒動の中心となっている狐面の少女がいた。
少女の口調が姉の時やお嬢の時とはまた違ったものになっているのだが、もちろん巫女はそんなこと知るはずもなかった。
巫女は少女に背中を向けたまま話を続けた。
「あなたは一体何者なのかしら?参拝客・・・ってわけではなさそうだけど」
「何が目的なの?」
「いやぁ、私ちょっと主を探しているんスよ」
「どこにいるか知らないっスか?」
「あ!もしかしてあなたが主スか?」
「いいえ、私はあなたを知らないわ」
自分が探している人のことをよくわかっていない?なんか怪しいわね
巫女がそう思うのも無理はない話であろう。
夜中にいきなり現れた狐の面を被った不気味な少女が『顔も知らない主人を探している』ときたもんだ。
怪しく思わないほうが逆に不自然である。
もしかしたら『主を探す』というのも嘘なのかもしれない。
「そうっスか・・・なかなか見つからないもんっスねぇ」
「仕方ないっス、もう1回家の中を探してみるっス」
少女はそう言うと母屋のある方向に歩き出そうとする。
「待ちなさい」
それと同時に巫女は境内に凛とした声を響かせ、ようやく狐の面の少女のほうに向き直った。
向き直って顕になった彼女の顔からはなにか強い意志を感じる。
「どこの誰かもなんの目的なのかもハッキリしないあなたを家に招くわけにはいかないわ」
「ここは私達とアイツの居場所よ」
「それを壊そうと言うのなら・・・容赦はしないわ」
巫女はそう言うと少女の前に立ちふさがった。
対峙する二人の間を、冷たい夜の風が吹き抜けていった。
23:40
ー広間ー
「みぎゃぁぁぁぁぁぁ亜ァァァァァぁぁぁぁ!!!?」
「うぉっ!!??なんだぁ!??敵襲か!!?」
独りでエロ同人ごっこをしていた負け犬のもとにお嬢と白衣の二人がただならぬ様子で飛び込んできた。
エロ同人ごっこというやましい遊びをしていた負け犬は口から心臓が飛び出るほど驚いたようだ。
いや、実際に飛び出していた。
「まままま負け犬さん!出ましたの出たんですの!!!」
「ふぁにふぁふぇふぁっへ?」(何が出たって?)
「・・Loser・・まずは・・・その・・口から・・飛び出た・・・心臓を・・しまえ・・ですぅ。」
「なんなら・・・その心臓・・今・・・握りつぶして・・・やってもいい・・ですぅ。」
「ふぉっほ、ほれはひふぇひ」(おっと、これは失礼)
負け犬はゴッキュンと喉を鳴らして飛び出ていた心臓を飲み込んだ。
もはやギャグマンガのような光景である。
「で?何が出たって?トイレで小便が出たって話?」
「違いますわよ!!負け犬さんまで白衣さんと同じことを言わないでくださいまし!!」
「なっ!?・・・私が・・・この落ちこぼれと・・・同じ・・・だと!・・ですぅ。」
「今世紀・・・最大の・・・屈辱・・・・ですぅ」
あまりのショックにorzな体勢でうなだれた白衣を無視してお嬢は話を続ける。
「さっきトイレの前の廊下で幽霊が出たんですの!!」
「幽霊~?見間違いとかじゃなくて?」
「しっかりこの目で見ましたの!!間違いありませんわ!!」
「私だけでなく白衣さんも見たんですのよ!!ねぇ?白衣さん?」
「くそぅ・・・この恨み・・・はらさでおくべきか・・・ですぅ」
話をふられた白衣はというと、まだ立ち直っていなかった。
それどころかブツブツと呪詛のような言葉を吐き散らかしている。
それほどまでに負け犬と同じ扱いをされたことが嫌だったのであろう。
どんだけ嫌なんだよ。
「幽霊・・・ねぇ、この神社でそういう話は今まで聞いたことも見たこともなかったけど」
しかし、先ほど慌てて部屋に飛び込んできた2人や今もなお半泣きで訴えかけてくるお嬢を見る限り、今この神社で何かが起きているのは間違いなさそうだ。
そう判断した負け犬が2人から詳しい話を聞こうとしたその時、広間の出入り口が開いた。
「お待たせ~お夜食の準備ができたよ~♪」
「お兄様!食器をお持ちしました!」
「うん?なんでお嬢ちゃんは半泣きで白衣ちゃんはうなだれているのかな?」
「おまけに白衣さんはなにかブツブツ言ってますね・・・」
夜食の準備をしていた姉と、食器を取りに行った勝ち猫が戻ってきたようだ。
若干カオスになりつつあるこの状況を不思議に思った姉と勝ち猫は首をかしげている。
とりあえず、夜食はまだちょっとお預けかな。
そう思った負け犬はお嬢と白衣に幽霊事件の詳しい話をするように促すのであった。
少女説明中・・・・
「え?2人もあのお面の女の子に会ったの?」
お嬢と白衣が一通り事情を説明した後、姉は少し驚いたような顔でそう言った。
「・・姉も・・・会ったのか?・・・ですぅ」
「うん、お夜食の準備をしてたら突然現れたんだよ」
「大丈夫でしたの?なにかされませんでした?」
「私はなにもされなかったよ?」
「姉さんには何もしなかったのに、なんで私達の時は追いかけてきたんですの?」
『えこひいきですわ』と、お嬢は不満そうな顔をして文句を言う。
あれだけ怖い思いをさせられたのだ。
お嬢が文句を言いたくなるのも少しは理解できる。
お嬢は後にこの件のせいで1ヶ月ほど夜に1人でトイレに行けなくなったのだが、それはまた別のお話。
「割れた狐のお面に紫色の着物っぽい服装の少女・・・ですか。」
「私は見かけませんでしたが、お兄様は見ましたか?」
「・・・・・」
「お兄様?いかがなさいましたか?」
「あ~、うん、大丈夫、なんでもない」
(その少女ってまさか・・・)
(いやでも、あの娘は人を脅かしたり追いかけまわしたりしない・・・はず)
どうやら心当たりがあるにはあるみたいだ。
だが、負け犬が知っている少女は人を追いかけたり脅かしたりするような性格ではないらしい。
確証が得られないためつい言葉を濁して誤魔化してしまった負け犬を不思議そうな顔で見ていた勝ち猫だが、姉が口を開いたため姉のほうに意識を向けた。
「あれ?そういえば巫女ちゃんは?」
「巫女は境内にある社務所に忘れ物を取りに行ったよ」
「巫女さん、一人で大丈夫ですわよね?幽霊に襲われてるんじゃ・・」
「まぁ・・・巫女の・・ことだし・・・心配は・・・ないと・・思うが・・ですぅ。」
「でもやっぱり心配ですね」
「巫女ちゃんなら大丈夫だとは思うけど、一応様子を見に行ってみようか」
「俺とお嬢と白衣で社務所に行ってみるよ」
「もし巫女ちゃんと行き違いになったときのために、勝ち猫と姉はここで待っててくれる?」
「わかりました」
「さぁて、じゃあ行こうか」
「えぇー・・・私、できれば行きたくないですわ・・・」
「それに!もしかしたらこの部屋から出た途端にまた追いかけてくるかもしれませんわよ!?」
「ですのでここは下手に動かないほうがいいと思いますわ!」
お嬢は余程行きたくないのか、『下手に動くと危険説』を唱え始めた。
白衣は無言でお嬢を一瞥し、懐からおもむろにナイフを取り出して幾分警戒しながら部屋の出入り口に向かった。
そしてドアを開け放ち、部屋の外を覗き込んだ
「正面・・よーし・・・左右・・よーし・・・上下・・よーし・・・オールグリーン・・・敵影無し・・ですぅ。」
「よし、では逝こう」
「字が『逝く』になってますわ!?私は逝かないですわよ!!」
「はいはい、いい子だから一緒に行きましょうねぇ~」
「・・つべこべ・・言わずに・・・さっさと・・行くぞ・・ですぅ。」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ人攫いぃぃぃですわぁぁぁぁぁぁ!!!」
駄々をこねるお嬢はまるで捕獲された宇宙人のように負け犬と白衣に連行されていった。
そんな3人を姉は苦笑しながら見送り、ボソリと呟いた。
「・・・大丈夫かな?」
「お兄様がついていますから大丈夫だと思います・・・けど」
「けど?」
「・・・またお兄様と離れ離れになってしまいました」
「あぁ・・・圧倒的にお兄様成分が不足しています、早くお兄様成分を補充しないとおかしくなってしまいそうですお兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様」
お嬢といい白衣といい勝ち猫といい、ここの住人はどんな状況でもいつも通りであった。
良く言えばマイペース、悪く言えば危機感のない平和ボケである。
姉はそんなマイペースなヤンデレを正気に戻すべく、1人奮闘を開始するのだった。
23:45
ー境内ー
5月にもなると夜は虫やカエルの奏でる音色で少しだけ賑やかになる。
都会はどうかは知らないが、少なくとも田舎であるここ落ちこぼれ神社はチラホラと虫やカエルの音色が響いていた。
そんな天然のBGMが響き渡る夜の境内で、巫女と少女は微動だにせず向き合っていた。
(全然動きがないわね・・・どうしたものかしら)
(できれば穏便に済ませたいところだけど)
巫女は普段から刃物片手に暴れまわっている白衣や勝ち猫に負けず劣らずな戦闘力の持ち主ではあるが、2人と違って好戦的ではない。
今のこの状況もできることなら穏便に済ませたいと思っていた。
それ故に、自分から何かすることなく相手の出方を窺っているわけだが、 どういうわけか相手も何もしてこなかった。
何故か一言も喋らずに沈黙している。
このままでは埒が明かないので、巫女は少女からもっと詳しく話を聞き出そうと思い少女に話しかけようとしたその時、この膠着状態をぶち壊すかのように複数の人物が姿を現した。
「あ、巫女ちゃん、大丈夫だった?それとここで何してるの?」
「・・・どうやら・・噂の・・お面少女と・・第三種接近遭遇中・・みたい・・ですぅ。」
「え!?幽霊がいますの!?早くみんなで逃げなきゃですわ!!」
いまだに捕獲された宇宙人のような恰好で2人に引きずられていたお嬢は、お面少女の姿を見た途端ビチビチ暴れだした。
しかし、お嬢は負け犬と白衣にしっかりと捕獲されているので逃げることは出来なかった。
そんな3人を巫女はジトッとした目で見ていた。
完全に馬鹿を見る目である。
「・・あんた達は何しに来たのよ?今取り込み中だから宇宙人ごっこは他所でやりなさい」
「・・巫女が・・・お面少女に・・ちょっかい・・・出されて・・いないか・・・様子を・・見に来た・・ですぅ。」
「・・案の定・・・絶賛・・・遭遇中・・みたいだな・・ですぅ。」
白衣はお嬢を掴んでいた手を放すと、お面少女をチラリと一瞥した。
「・・・・ん?」
お面少女を一瞥した白衣は、少女の割れた狐面からのぞいている左目が何かに釘付けになっていることに気づいた。
どうやら巫女もそのことに気づいたようだ。
巫女と白衣は少女の視線の先を見てみると、そこには負け犬がいた。
「・・まさかとは思ったけど、やっぱりそうだったか」
負け犬は少女に向かって言った。
やはり負け犬はこのお面少女のことを知っているようだ。
事態はまさに急展開。
周囲が固唾呑んで見守る中、少女が口を開いた。
「あなたが・・・主、だよね?」
少女はまるで答え合わせをするかのように負け犬に問いかけた。
その問いかけに答えるべく、負け犬は口を開いた。
「ぅお兄ぃぃぃ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ふぎゅっ!!??」
・・・・・が、負け犬の口から言葉が発せられる前に、突然勝ち猫が猛烈な勢いで負け犬に突っ込んできた。
勝ち猫の進路上にいたお面少女はスターをとったマリオに跳ね飛ばされるクリボーの如く吹き飛ばされ、顔から地面に突っ込んでいた。
痛そう・・・。
「か、勝ち猫?確か広間で留守番を頼んだはずじゃ・・・」
「申し訳ありません!お兄様成分が足りなくなってしまったので急遽補充しに参りました!」
「お兄様成分ってなにかしら?」
「・・摂取すると・・・落ちこぼれに・・なりそう・・ですぅ。」
緊迫した空気が一気に崩れ去り、何とも言えない微妙な空気になっていた。
ていうか、お面少女が地面に顔を突っ込んだままなんだけど?
誰か助けてあげて?
「体当たりで跳ね飛ばすなんて・・・勝ち猫さんも無茶苦茶しますわね」
「え?私誰かにぶつかってしまいましたか?」
「気づいてなかったんですの!?」
お兄様成分があまりに不足したために周りが見えていなかった模様。
スターをとったマリオが暴走したらもはやただの最終決戦兵器だ。
顔が真っ青になったクリボーやノコノコが目に浮かぶようである。
「勝ち猫ちゃん、走るの速すぎるよぉ・・・って!さっきの女の子が地面に突き刺さってる!?」
「おっとそうだった」
遅れてやってきた姉が地面に刺さった少女に気づき、慌てて助け起こそうとしている。
さすが我らがオアシス的存在な姉。
よく知らない初対面の相手にも菩薩対応をしていた。
少女救出任務に負け犬も加わり、ほどなくしてお面少女は地面との熱い接吻を終えることができた。
「で?この娘は一体誰なのかしら?」
もちろん説明してくれるわよね?と顔に書き殴ってある巫女が負け犬に尋ねる。
「勝ち猫の・・・体当たりが・・・効いた・・から・・・幽霊では・・・なさそう・・ですぅ。」
「あ!確かにそうですわね!それなら体当たりしか出来ないミュウツーでも勝てますわね!」
「えっと?なんでポケモンの話になってるのかな?」
お嬢と白衣の逃走劇を知らない姉は、突然ポケモンの話題が出てきたことに首をかしげていた。
そもそも体当たりしか出来ない弱そうなミュウツーなんているわけがない。
お嬢と白衣はミュウツーに土下座して謝るべきだと思う。
ミュウツーにとても失礼な会話をしている2人を置いて、負け犬はお面少女と話を進めていく。
「あなたが私の主なんだよね?」
「うん、そうだよ」
「・・・ようやく主に再会できた」
お面少女は安心したかのようにホッと一息つき、負け犬の服の袖をそっとつまんだ。
迷子になった子供が親と再会したような微笑ましい図である。
「あの女、私のお兄様に気安く接するとはなんて身の程知らずで恥知らずなんでしょうかこれはもう処罰するしかないですね『私のお兄様を誑かそうとした罪』で死刑または懲役297年の実刑判決が妥当だと思います相応の報いですもちろん拒否権はありません強制執行です仮に法や神が許したとしても私は絶対許しません私が必ず天誅を下しますブツブツブツブツ・・・」
「負け犬さんに可愛い従者がいるなんて、お姉ちゃん初めて知ったよ」
「そうね、私も今初めて知ったわ」
嫉妬に狂って物騒なことをブツブツ言っている勝ち猫を無視して、巫女と姉は負け犬に話しかけた。
そんな2人に負け犬は真顔で言った。
「え?この娘は従者じゃないよ」
「この娘は俺の体内時計だよ」
・・・・・・。
「「「「「え?????」」」」」
負け犬の意味不明な発言に、負け犬とお面少女・・・もとい体内時計を除いた5人が疑問の声をあげた。
「いやぁ~さっきペヤング作る時に全然返事がなかったからどうしたのかと心配しちゃったよ~」
「でもまさか外に出てるとは思わなかったゾ☆」
負け犬はそう言いつつ体内時計の頭をワシャワシャ撫でた。
体内時計は微妙に嫌そうな顔をしているが、抵抗することなくされるがままになっている。
「そういえばさっきペヤングを作る時にお兄様が『体内時計が応答しない!』みたいなことを言ってましたね」
「あれはてっきり中二病患者特有の症状だと思っていましたわ、違ったんですのね」
「俺は中二病じゃないやい」
「そもそも、なんで体内時計は主人であるアンタの顔を知らなかったのよ?」
「ずっと俺のお腹の中にいたからじゃね?たぶん」
「・・じゃあ・・・お前は・・・何故・・体内時計の・・顔を・・知っていたんだ?・・・ですぅ」
「そこはほら、謎に満ち溢れた無駄に万能なご主人様パワーってやつのお陰だよ、恐らく」
「えっと・・・説明がフワフワしすぎかなってお姉ちゃんは思うな」
「まぁまぁ、細かいことを気にしたらそこで即敗者だよ」
「この小説っぽいお話はその場その場の思い付きでテキトーに書いてるだけだからさ、設定とかに綻びが出ちゃうのはしょうがないっていうか勘弁してくださいお願いします」
「さらっとメタい発言するのやめてくれるかしら?」
みんなの追及にフワッフワでクソみたいな説明で答えていく負け犬。
小学生だってもっとまともな説明ができるんじゃなかろうか。
見た目は大人、頭脳は子供で有名な馬鹿こと負け犬であった。
「はぁ・・・もういいわ」
巫女は指でこめかみを押さえながら疲れを感じさせる口調で呟いた。
色々納得いかない部分はあるが、これ以上追及したところで意味はないと悟ったようだ。
苦労してますねぇ。
「それで?体内時計はこれからどうするつもりなの?」
「とりあえずこの神社に住まわせるつもりだよ」
「よっしゃぁ!カップ麺の3分を計る時は俺に任せろぉぉぉぉぉ!!!」
「体内時計さんのキャラが急変しましたわ!!?」
「なんだ・・こいつ・・・頭・・おかしいのか?・・・ですぅ」
「この娘はキャラが不安定でブレッブレだから最初は話づらいけど、そのうち慣れるよ」
「ちなみに、体内時計さんは正確に3分計ることができるんですか?」
「もちろん勘だぜ?」
「勘なの!?」
堂々とふんぞり返って『勘』と宣う体内時計さんに姉は思わずツッコミをいれていた。
まぁ、『体内時計』というくらいだから正確に時間を計ることができないのも仕方ないのかもしれない。
そして負け犬は声高らかに宣言し、1人歩き出す。
「よし、これにて一件落着ぅ!!広間に戻ってみんなで夜食を食べようぜ!」
「今回の騒動の原因であるアンタに言われると無性に腹立たしいわね・・・夜食を食べるっていうのは賛成だけど」
「やっとお夜食にありつけますのね・・・長かったですわ」
「お兄様!実はさっき食器を取りに行った際に、私も少しだけおにぎりを作ったので食べてください!」
「そんな・・・何が・・入ってるか・・・わからん・・危険物・・なんざ・・捨てちまえ・・・ですぅ」
「きっとお夜食冷めちゃってるよねぇ・・・温め直したほうがいいかな?」
「私は冷めていても問題ないっス!」
なんだかんだ言いつつも負け犬に続いて歩き出すご一行。
ご一行の意識はすでに夜食や人生ゲームなどに向いているようだ。
和気藹々と話に花が咲いている。
どうやら、今夜は長い夜になりそうだ。
先を歩いている負け犬は、賑やかな面々を背中越しに見てそっと微笑んだのだった。
「あ、そうそう、体内時計さんに訊きたいことがありますの」
「HEY YOU!どうしたんだYO!」
「さっきトイレの前で私と白衣さんに会いましたわよね?」
「YES!YOU達は俺っちの顔を見た途端に怯えて逃げ出したYO」
「全く、失礼しちゃうZE☆」
「そして私と白衣さんは近くの部屋に逃げ込んだのですが、その後のアレは一体どうやったんですの?」
「・・それは・・・私も・・・気になる・・・ですぅ」
「アレってなんだYO?」
「ほら、かごめかごめを歌いながら急に私たちの背後に現れたじゃありませんの」
「あれには・・・さすがの・・・私も・・ビビった・・ですぅ。」
「・・一体・・・どういう・・トリック・・だったんだ?・・ですぅ。」
「へぇ~そんなことがあったのね」
「あの白衣ちゃんをびっくりさせるなんて、体内時計ちゃんすごいねぇ」
あれが幽霊の仕業ではないとわかったお嬢はその時の様子を何故か得意げにみんなに話していた。
自分がギャン泣きしながら逃げ回ったことは伏せて「いやぁ~あれは怖かったですわねぇ、でも私程のレディーになればあれくらい夜飯前ですわ!オーッホッホッホ!」とか調子のいいことを言っている。
しかし、盛り上がるお嬢とは裏腹に、かごめかごめ事件の仕掛け人であるはずの体内時計は何かを考え込むかのように黙り込んだ。
そして体内時計は真面目な顔をしてこう言った。
「YOUは何を言ってるんだ?俺っちはそんなことしてないYO!」
「・・・・え?」
「YOU達が部屋に隠れちまったから、俺っちはYOU達に接触するのを諦めて他の場所に行こうとしたんだYO!」
「それで俺っちがYOU達が隠れた部屋の前を通りすぎようとしたら、急にYOU達が慌てて部屋から出てきたもんだから思わず俺っちもびっくりしちまったんだZE!」
「でも・・・かごめかごめ・・を・・・歌っていた・・・のは・・お前・・だよな?・・ですぅ。」
「それもNOだ!俺っちはかごめかごめを歌ってないZE!」
「それどころか、あの時そんな歌なんて聞こえなかったYO!」
「もちろん、あの場には他に誰もいなかったZE!」
体内時計の爆弾発言により、辺りはシンと静まり返った。
先ほど調子のいいことを言っていたお嬢に至っては、顔から血の気が引いて涙目になっている。
「お嬢と白衣から話を聞いたときからおかしいと思ってたんだよなぁ」
「俺の知ってる体内時計は人を追いかけるなんてことするはずがないし」
静まり返る周りをよそに、負け犬はそれ見たことかと言わんばかりに横から口をはさんだ。
しかし、負け犬に返事を返す者はいなかった。
「・・・それじゃあ、お嬢さんと白衣さんが聞いたっていうかごめかごめは一体なんですか?」
「俺っちは存じ上げませんYO!」
「・・・って・・いうことは・・・ですぅ」
「本当に・・・幽霊だったってこと・・・かしら?」
「・・・・・」
「お、お嬢ちゃん?大丈夫・・・かな?」
姉は白目をむいて固まっているお嬢に恐る恐る声をかけた、その瞬間
「もう!!絶対!!夜中にトイレ行かないですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
時計の針が12:00ちょうどを指した5月のとある日の夜。
月が輝き無数の星が瞬く綺麗な夜空に、お嬢の叫び声がどこまでも響き渡ったのだった。
ー完ー
そんなわけで
体内時計ここに爆誕。
いやぁ、実は前々から体内時計も描き直さなくちゃなと思っていたんですよ。
過去に6人分の会話用アイコンを新しくしたんですけど、その時は余裕がなかったので体内時計ちゃんは後回しにしちゃったんですよね。
そしてそのまま体内時計ちゃんを描くのをすっかり忘れていたのですが、さすがにそろそろ描かなくてはイカンと思い、小説っぽいものと一緒に描いてみました。
体内時計は基本的には出番が少な目で、あまり会話形式の茶番にも出演しない予定です。
いやだって、さすがに1人7役はキツイっス←メタいこと言うな
ですが、カップラーメンなどを食べる記事には必ず出てくるのでどうぞよろしくお願いいたします。
↓ こういう記事では体内時計ちゃんが大活躍?です。
私は今回みたいな小説っぽいものを書くのはなにげに初めてだったのですが、いかがだったでしょうか?
書きたくなったので思い付きで書いてみただけの拙いものですが、ドドドド素人なりにテキトーに頑張って書いたつもりです←頑張ったのか頑張ってないのかハッキリしろ
それにしても、こういう物語を書くのは結構大変なんですねぇ。
書くのにスゲー時間かかりました。
小説やラノベを書いていらっしゃる方の苦労がほんの少し垣間見えた気がします。
とかいう細かい感想は置いといて、なんだかんだでだいぶ長くなってしまったので今回はこの辺でお開きにしますか。
ということで今回はここまで。
それではまた次回(^o^)/
いや~、俺これ書くの結構頑張っちゃったよ。
物語の完成度はともかく、アンタにしては頑張ってたわね。
私がオチ担当だなんて微妙に納得いきませんわ。
そういえば、結局幽霊はどうなったのですか?
・・あの後・・・滅茶苦茶・・除霊・・した・・ですぅ。
体内時計ちゃん可愛い~♪
ぐぇ・・・苦しいから抱き着かないでほしい・・・。